ケアタウン総合研究所
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ケアタウンメルマガ元気いっぱい
第521号
2019/05/31(Fri)
http://caretown.com/

▼今週の目次▼
[1] ムロさんの警鐘:「川崎殺傷事件と8050問題」〜求められるアウトリーチ〜
[2] 注目のニュース
[3] 連載のお知らせ
[4] 編集後記

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■ ムロさんの警鐘

===「川崎殺傷事件と8050問題」〜求められるアウトリーチ〜===
      
 川崎市で児童ら19人を殺傷した後に自殺をした川崎殺傷事件。その凄惨さに衝動殺人や自殺巻き添え事件のような報道がされましたが、次第に事件の本質が垣間見える事実が明らかになってきました。

 容疑者である岩崎隆一(51歳)は幼少期に両親が離婚し叔父・叔母の家に引き取られ育ったこと、そこには同年代のいとこが2人いて私立のカリタス小学校に通っていたこと(本人は公立の小中校)、家庭内格差が厳しくいとこは坊ちゃん刈りで本人は坊主刈り、小中高校ではキレがちで友人はなく、近所の家に入って金魚鉢を眺めているような少年だったこと、20代からひきこもりがちで最近は近所と揉めることが多かった・・・などなど。
 
 なぜ「カリタス小学校だったのか」・・・いとこは近所に住み、かれらの子どもたちも通っていて、孫の顔を見せるためによく実家に見せに来ていたといいます。楽し気な会話が同じ屋根の下で引きこもる甥の彼の耳にはどのように響いたことでしょう。
 
 叔父・叔母の家に30年以上も「絶縁状態」のままの不気味な存在の甥・・・介護保険の利用でヘルパーや訪問看護が家にやってくる事に不測の事態を予測した叔父・叔母は川崎市に相談します。その数は15回。記者会見では市の専門職は本人に会うことは一度もなくアドバイスのみということも明らかになりました。一方、暴力や威圧的な行動などの相談はなかったとも・・・しかし、叔父が書いた手紙に「引きこもり」と書かれ、彼は腹を立てます。

 1980年代から不登校やひきこもりが始まりほぼ40年。10代の彼らは50代となっています。そして親たちは40代から80代に。8050問題は将来を悲観しての心中騒ぎや力関係が逆転しての暴言・暴力、果ては尊属殺人という事態を招いています。

 凄惨な事件を起こした犯罪者には「被害者意識」が高い傾向があるといいます。「このようにしたのは〇〇のせいだ」という他者への責任転嫁が本人にとっては正論となります。焦燥感と苛立ち、孤独と孤立感、そして自暴自棄と絶望が沸点に達した時、それは「牙」となって凄惨な事態を招くことになります。

 いまひきこもりを抱える親たちとひきこもり当事者61万人はこの事件をどのように見ているでしょう。共通する部分に恐怖を覚え、近所や身内からの視線に怯え、なす術(すべ)さえ見えないことへの不安感で追いつめられていることでしょう。
 そして定職がなく未婚でひきこもる人たちを断罪するかのような社会の「クズ、無能、ダメ、無価値」という言葉に代表される空気感です。孤立したままでは「心の自傷行為」は収まりません。

 だからこそアウトリーチが求められています。
 「社会的に孤立した人たち」のリアルな情報を持っているのがケアマネジャーや相談支援専門員、地域包括支援センター、そして民生委員のみなさんです。まだ大丈夫と決めつけることなく、自分で抱えることなく、見て見ぬふりをすることなく・・・いま「そこにある危機」を「事件」にする前にチームでアウトリーチする手法の模索が求められています。

 加害者批判と被害者哀悼だけで問題は解決しません。
 これらの事件の原因と遠因、環境と影響に向き合い、改善のアクションに本人(当事者)とともにていねいに地道に取り組むことでこそ、悲劇の連鎖を止めることになるでしょう。 


■ 注目のニュース

1.成年後見制度の利用促進へ 2021年度末までに全市区町村に「中核機関」  
      
 厚労省の成年後見制度利用促進専門家会議は27日、本人や家族の相談にのったり、後見人のあっせんや後方支援を行う「中核機関」を全区市町村に設置するなど2021年度末までの施策の数値目標(KPI)案を固めた。現在、政府がまとめている認知症大綱に反映させ、実効力を担保する。「中核機関」を設置した市区町村は2018年10月時点でまだ79市区町村で全体の4・5%。相談や広報など取り組みやすいところからはじめ、段階的に機能を拡充していってもらう方針だ

2.ハコモノ整備は抑制を 〜第8期の基盤整備巡り〜(介護保険部会)

 社会保障審議会介護保険部会は23日、第8期での介護基盤の整備をどうするかについて議論した。第7期事業計画に盛り込まれた2025年の整備目標は、大都市圏では高齢者人口の増加に伴い引き続き高い伸びを見込んでいるが、「施設を増やせば人手不足も深刻化する。機能強化で対応すべき」「サービス付き高齢者向け住宅も介護施設として介護保険事業計画に位置づけるべき」などの抑制を求める意見が多かった。 

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★ 連載のおしらせ

◎中央法規:月刊ケアマネジャー6月号高室流つながりのデザイン術
└→新連載「利用者と〇〇をつなげる」(Vol.3)


◇ 編集後記

 「募集をかけても誰も電話をしてこないんです。ここまでとは・・・と。外国人の人材に頼るしかないと思っていますが、それもどこまでアテになるか・・・」原因はいろいろとあります。他業界と比較した給与格差、身体を痛める作業、キツイ夜勤、増えるクレーム、そして介護事故などなど。このようなマイナスイメージが浸透してさらに応募者が減る事態になっています。
 ここ10年は住宅型有料やサ高住の新設ラッシュに並行して併設の訪問介護や通所介護の事業者も増えてきました。つまり人材が集まらないのに器だけが乱立しているわけです。これからは新設特養ラッシュが控えています。
 訪問介護のヘルパーさんのなり手不足も深刻ですが、50代〜60代となったヘルパーの人たちの「定年引退」が始まっているという事実もあります。年齢的にキツイだけでなく、ご自身の親の介護や配偶者の介護が始まってきたわけです。いわば介護業界の「介護離職」です。
 ちなみに介護の人の退職理由の第3位はなんだと予想されます?なんと「理念やケアの方針に納得できない」ということなんです。つまり掲げる理念とリアルがあまりに異なることへの違和感が大きいようです。これこそ問題です。<ムロ>

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編集及び発行責任者:S.Takamuro
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