ケアタウン総合研究所
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ケアタウンメルマガ元気いっぱい
第510号
2018/05/24(Thu)
http://caretown.com/

▼今週の目次▼
[1] ムロさんの既視感:「AIプランになぜ“危うさ”を抱いてしまうのか」
[2] 最新業界ニュース
[3] 今週の「駆け込み寺」
[4] 「人間にとって健康とは何か」(斎藤環著:PHP新書 定価800円+税)
[5] 東京スクールのご案内
[6] 今週のおしらせ
[7] 編集後記

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│テーマ│「漂流する家族と家族介護の葛藤〜今、そこにある「家族」の危機〜」
│日 時│7月28日(土)13:00〜17:30(受講料6000円:メルマガ会員5000円:スクール会員4500円) 
│申し込み│WEBにて→http://caretown.com/honne/honne3007.shtml

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■ ムロさんの既視感

===「AIプランになぜ“危うさ”を抱いてしまうのか」===

 世の中は「AI」が持てはやされています。自動車に家電にゲームに・・・人間が考える手間をあっという間に省いてくれる夢のコンテンツです。
 このAIがケアマネジメントの世界にも本格的?に入ってきました。

 先週末の札幌であった第17回ケアマネジメント学会。2日目のランチョンセミナーで内閣府のお墨付き?で実証実験を進めるCDI社がプレゼンテーションをしました。配布された資料を開くと飛び込んでくるのは、ちょっとどうかなという表現のオンパレードです。

・AI技術の進化:AIはディープラーニングにより(中略)、人が気づいてすらいない階層を計算し、優秀な職人の勘までも学べるようになった。
・ケアマネジャーとAIによるハイブリッド型ケアマネジメント
・AIは経験値を知恵に変えることができる

 ここまで言い切るのか・・・説明はわかりづらいものでした。

 ここで資料をちょっと紹介しましょう。読むと「学習したGoodケアプランを特徴量でマッピング」とあります。しかし、その情報の元は要介護認定調査と主治医の意見書のみです。そこからGoodケアプランを提案するというもの。それをみると「(1)身体1生活1/週1、(2)身体2生活1/毎日、(3)生活援助/週1、(4)訪問リハビリ1/週6」とあります。「自立支援効果のあるサービスの採用」と書いてありますが、これはサービスセッティングでしかありません。
 さらにADL・IADLの将来像をレーダーチャートで予測し、改善が期待される項目を棒グラフで予測表示が。これを「将来像の共有化による合意形成と業務改革」につながるとも・・・(う〜ん、大雑把だなぁ)

 資料内の豊橋市のケアマネジャーBさんの感想がふるっています。
 「サービスの裏付け、説得力が生まれる。秘密兵器(太字!)として、最後の切り札(太字!)のように使える可能性がある」と。なんと自分の説明力の無さをAIで押し切ろうということです。・・・利用者本位という基本理念はどこにいったのでしょう?
 AIの位置づけの項目では「利用者(家族)でAI=最先端というイメージを持っている人にはAIを受け入れやすく、ケアマネジャーへの信頼度もあがる」という一文が・・・黄門さまの印籠か!とツッコミたくなります。
 まさに、実証実験に参加したケアマネジャーをこのような認識にさせてしまうところに「危うさ」があると思うのは私だけではないでしょう。

 なんともはやですが・・・アンケート結果の説明もありました。「実証実験前:非常に役に立つ/1人→実証実験後:/3人」ばかりを前面に出す(本人の発言まであり!)説明にはちょっと失笑するほど。否定的な感想(役立つ10人→5人、どちらかというと役立つ/15人→8人、あまり役に立たない/5人→14人)の分析の説明はほとんどありませんでした。「整合性を出すのに混乱がある。ケアプランは生活のニーズから考えていくのにAIのプランは逆である」とありましたがこれもスルーされました。あげくは「まだ子どもなら3歳程度なんです」という言い訳が。近頃、よく聞く会見の弁明のようです。

 ケアマネジャーの仕事はケアプランでなくケアマネジメントです。ケアプランは個別性が高く(年齢、性格、性別、生活習慣、価値観、こだわりなど)、なおかつ自己負担できる金額も影響します。それにサービス利用拒否、サービス資源がないなどの事情もあるのに、要介護認定調査だけで一方的にセットプランを提示するという乱暴さ・・・

 この押し切り感はどこからくるのでしょう?産業革新機構と内閣府の後押し(神風?太鼓判?)があるからと勘繰る人もいても仕方ないでしょう。
 フロアからの数少ない質問「これを国から使いなさいと通達があればあなたは使いますか?」(M.Hさん)にケアマネジャーBさん(多分)の「それなら使うしかないと思います」の回答!に愕然としたのは私だけではないでしょう。(いや、ここまで洗・・・されているの?)

 私はAIをケアマネジャーの業務改善や利用者の見守りや介護現場のサポートに使うことは肯定派です。使い勝手はいろいろとあると思うからです。官民ファンドの連携を行う産業革新機構の投資のもとに行われている本プロジェクト。公的資金も投入されているわけですから、ぜひともこのアプリのノウハウを社会的に公開していただくことを期待します。


■ 最新業界ニュース

1.2018年3月期決算 在宅介護大手3社増収増益
           
 上場する大手介護事業の決算発表が続いている。在宅介護大手3社の2018年3月期決算が出そろった。3社とも増収増益だ。ニチイは中重度者に対応を強化させ、居住系が好調だ。戦略や得意分野はそれぞれだが、各社とも介護報酬への依存度は高く、今後、給付が重点化されていくことを見込んで中重度者への対応を強化しているのは共通だ。

2.施設人材確保に家賃補助2万円〜今年度から独自に人材対策〜(三鷹市) 

 東京都三鷹市では今年度から、独自の介護人材対策に取り組む。介護施設が職員に家賃補助や研修費用を助成した場合に、市が補助する仕組みだ。初年度は1千万円の予算を確保した。働く側にとって魅力となりそうなのは、家賃補助。補助額は最大2万円で、最長5年まで補助を行う。今年4月以降、市外から市内の特養、老健に就職した介護福祉士、看護師等に対し、施設が家賃補助を行った場合に市が補助する。確保が難しくなっているとされる夜勤のできる職員の確保を最優先した。

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 最新ニュースは「シルバー新報」の協力により著作権の許可を得て掲載し
 ています。シルバー新報 ウェブサイト→ http://www.silver-news.com/
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■ 今週の「駆け込み寺!」

「講師を頼まれることが増えました。でも流れに乗ってうまく話せません。緊張すると“噛む”ことがあります。考え過ぎると早口になってしまいます。うまく話そうとすると言葉を加えすぎて長くなってしまいます。」
(N.Tさん 世田谷区 主任ケアマネ歴5年 ケアマネ歴11年)

【ムロさんの助言】
 10年選手となると講師を頼まれることが多くなると聞きます。「正しく伝えたい」と思うことは大切ですが、「なにもかも話す」ことではありません。それでは受講者は「考える余地」がなくなります。それは一方的な詰め込みでしかありません。教えることは7割、グループで話し合うことを3割くらいにするといいでしょう。早口になっている人は聞き手の顔が見えていません。あがる人は自分ことでいっぱいいっぱいです。そんな時は、わざとかなりゆっくりと話すようにしましょう。それでも緊張が解けないなら「〇〇のことについて隣の人と話し合ってみましょう」と受講者に問いかけて、話し合っている時間に気持ちを落ち着けましょう。これもテクニックの1つです。

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■ ムロさんの本棚から

「人間にとって健康とは何か」(斎藤環著:PHP新書 定価800円+税)

【ムロさんの書評】
 近年、医学界では「健康の考え方」にパラダイムシフトが起きているといいます。これまでの「疾病生成論」から、健康とは何か、どうやれば健康になれるかを探る「健康生成論」に注目が集まっています。心の健康の尺度を測るSOC(首尾一貫感覚)、レジリエンス(逆境を乗り越える適応力)などの理論を駆使し健康の在り方を問う本書で興味深かったのはポジティブ心理学が示す幸福度の促進要因でした。上昇させるのは「社会的つながり、結婚、情熱を傾ける仕事、スピリチュアリティー、趣味、よい睡眠と運動、社会階級、主観的健康」をあげ、関係がないものに「年齢、外見的魅力、お金、性別、教育レベル、子ども、気候のよい地域、住居、客観的健康」と述べます。現代の健康観や幸福観に一石を投じるおすすめの一冊です。

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★ 東京スクールのご案内

≪場 所≫新宿御苑前駅 研修会場(ルネ新宿御苑タワー2階)
≪申込み≫ホームページより→ http://caretown.com/tokyo/
(メール、電話、Faxでも受付中!WEBから申込可能!)

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※隔月で旬なテーマを取り上げ実践的に学べるスキルアップの場です。
│テーマ│「漂流する家族と家族介護の葛藤〜今、そこにある「家族」の危機〜」
│日 時│7月28日(土)13:30〜17:30(受講料6000円:メルマガ会員5000円:スクール会員4500円) 
│申し込み│WEBにて→http://caretown.com/honne/honne3007.shtml


★ 今週のおしらせ

◎中央法規『けあサポ』ブログ
今週の「ケアマネさん、あっちこっちどっち」
└→「連載:4月号〜高室流の新連載がはじまった!〜」(第506話)
URL:http://www.caresapo.jp/senmon/blog-takamuro/33312

◎中央法規:月刊ケアマネジャー5月号高室流自分の磨き方入門
└→「関係力づくり」(Vol.2)


◇ 編集後記
 今週のゴタゴタは日大アメフト部。これはひどいですね。びっくりです。当事者の宮川選手が堂々の顔出しで記者会見をしてから、ようやく監督・コーチの記者会見をするという始末。120分の記者会見をナマで見て思うのが「そんなつもりがなかった」という言い逃れと責任転嫁。宮川選手の話しぶりを見ていたTVのコメンテーターが「まるで上官の命令には黒も白と従わざるを得ない日本兵様だ」という表現をしていました。記者会見の終わりでも「彼はもっと強くなれるからああいう表現になった」「なんとかしてやろうと思った」など体育会的な一方的な期待論をかけるかと思ったら「われわれが期待しすぎた」「日大アメフトの伝統が(彼に)浸透していなかった」とも・・・そこには本人が抱くスポーツの楽しさややりがいを支える指導者の視点はありません。ただの勝負の駒扱い(勝利至上主義)にしか聞こえません。「ひとりの人間として尊重していない」のが腹立たしく感じるのは私だけでしょうか。<ムロ>


個人:http://www.facebook.com/shigeyuki.takamuro
ケアタウン総合研究所:http://www.facebook.com/caretown.jp

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編集及び発行責任者:S.Takamuro
提供:ケアタウン総合研究所( http://m.caretown.com/ )





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