ケアタウン総合研究所
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ケアタウンメルマガ∞元気いっぱい
第473号
2016/12/22(Thu)
http://caretown.com/

▼今週の目次▼
[1] ムロさんの警鐘:「介護を悔悟とさせないために〜歪んだ?自立支援〜」
[2] 最新業界ニュース
[3] 今週の「駆け込み寺」
[4] 私の本棚から:「認知症の人がスッと落ち着く言葉かけ」(右馬埜節子著 講談社 1400円+税)
[5] 東京スクールのご案内
[6] 今週のおしらせ
[7] 編集後記

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■ ムロさんの警鐘

===「介護を悔悟とさせないために〜歪んだ?自立支援〜」===

自立支援・・・ここ数年、この意味合いが介護保険制度当初といささか印象が変わってきたようです。つまり、危惧するのは自立支援が「機能改善」や「要介護度」の改善が主目的となってきていることです。

福井県では「要介護度改善促進事業」を昨年度行いました。参加した145事業所の全利用者数は1542人。その12%の22事業所/192人の要介護度が1年後に軽くなったのです。その結果、22事業所に708万円が奨励金として支払われました。

同様の取り組みは東京都品川区では3年前から、江戸川区、名古屋市、川崎市などのデイサービスで導入されています。
いわば「成果主義報酬」を導入する各自治体の狙いはどこにあるのでしょうか。「いいケアを提供して利用者の要介護度が下げると報酬が減ってしまう報酬体系がおかしい」という事業者の声にこたえたカタチですが、果たしてこの先に何が待ち受けているのでしょうか。

自立支援とはなんでしょう?「要介護度の改善」が第1義なのでしょうか?
私は「みなさんは自立を利用者(家族)の方にどのように説明しますか?」と研修で問いかけると、7割近くの人が「自分でできるようになること」と返事をします。「では、要介護4〜5の方はできないことが多くなりますよね。その回答では矛盾しませんか?中重度の人には自立支援は当てはまらないのでしょうか?」・・・
すると会場に沈黙が流れます。

「自立とは″自分で行うこと゛と考えてはどうでしょう。要介護状態になれば、心身の機能が低下しているわけですからそこになんらかのサポートが必要となる。人が行うのが介護、道具が行うのが福祉用具、痛みや痺れの抑制、機能改善をするのが医療と考えてみてはどうでしょう」
そして私は続けます。「その前に重要なのが自律です。つまり自分で決めること。本人の自己決定(自己意思)を尊重し、その意向に寄り添った介護や医療を行って本人らしい暮らしを支えること。それは要介護5になっても同じです。だから私は自立(自律)支援というのが適切だと考えます」

1982年にデンマークで制定された「高齢者ケアの3原則」というのがあります。その第1が自己決定権(本人の意思)の尊重、第2が残存能力の活用、第3が生活の継続(本人らしさの継続)です。いまの自立支援は第1と第3をないがしろにし、やたら第2ばかりを強調している感があります。

高齢者は加齢に伴い心身が衰弱し、老衰は自然の摂理です。「齢(よわい)=弱い」であり、加齢とは「弱さを重ねることである」「超高齢社会とは強者が弱者になっていく社会」「だからこそ弱者になっても安心して生きていける社会を」と社会学者の上野千鶴子さんは説きます。

個人的な工夫や努力は大切です。しかし強制的な筋トレを強いてしまう歪んだ?自立支援が、本人にとって「虐待的ケア」となってしまわないでしょうか。
行き過ぎた自立支援の流れが、要介護の改善がみられない人たちの自尊感情を損ない、意欲を削ぎ、貶めるなら、それは「自己差別」を生み、障がい者差別につながる、と上野さんは続けます。

自立支援?介護が「人生の悔悟」を招いてしまっては、あまりに本末転倒です。本人の意思をかえりみない過剰ともいえる介護サービスや医療が自立(自律)支援なのでしょうか?
私たちはいま「岐路」に立っています。


■ 最新業界ニュース

1.負担能力に応じた見直しへ 軽度者の給付見直し「検証後に」

社会保障審議会介護保険部会は9日、「介護保険制度の見直しに関する意見」をとりまとめた。年々給付が増え続ける中で、高齢者、現役世代ともに、保険原則から離れて、より納得が得られやすい負担能力に応じた見直しに舵を切る。財務省が強く求めていた軽度者向けのサービスのさらなる見直しは、今回は見送られたものの、新しい介護予防・日常生活支援総合事業の検証後の宿題になり、完全に火種が消えたわけではない。福祉用具では、「上限額」の導入が波紋を広げそうだ。

2.定住外国人を介護職に (群馬県)

群馬県は、介護事業所での人材不足の解消に向け、定住外国人の就職支援・定着促進を図るため介護の実務に必要な日本語や実技を修得してもらう研修を始める。2017年1月から2コースで120人程度の受講を見込んでいる。

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最新ニュースは「シルバー新報」の協力により著作権の許可を得て掲載し
ています。シルバー新報 ウェブサイト→ http://www.silver-news.com/
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■ 今週の「駆け込み寺!」

「利用者の家族がかつて専門職だった場合。その人は福祉関係の元大学教授なので関係づくりに緊張してしまう」
(T.Nさん 女性 ケアマネ歴15年)

【ムロさんの助言】
ケアマネジャーや介護職のみなさんが家族として親の介護にかかわっている話を聴くことも増えました。その際、自分の本業を伝えるのですか?と尋ねると「いえいえ、それは黙っています」と8割がたの人が答えます。それはなぜか?気を使わせたくないのか、専門職の経験があるからアテにされるかもしれない、家族としての本音を語れなくなる、など心情はいろいろ。ただ仕事の介護と家族の介護はちがう、と多くの人が語ります。利用者だったら尚更かもしれませんね。家族がいくら介護・医療の専門職でも「家族としての立場や本音」を傾聴し、寄り添い・共感し、尊重することに変わりはありません。なぜ緊張するのか、自分自身の心に問いかけてみましょう。

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■ ムロさんの本棚から

「認知症の人がスッと落ち着く言葉かけ」
(認知症相談センターゆりの木 代表 右馬埜節子著 講談社 1400円+税)

【ムロさんの書評】
本書は13年間、認知症相談の最前線で2000以上に対応してきた右馬埜(うまの)さんが、どうしたら認知症の人に落ち着いてもらえるか、その言葉かけ・接し方をまとめた一冊です。認知症の人たちの脳は「記憶の壺が壊れた」状態。だから「足し算」でなく「引き算」がいい。「見よう見まね、山勘、自己流」でなく、一人ひとりの個性に着目した言葉かけは具体的です。デイサービスに行ってもらうアイデアでは、送迎車を「教授会のお車」、元酒屋の主人には「ご用聞きに来てほしい」、元教師には「講師をお願いします」、ギタリストには「ギターの先生」などなど・・・と本人のかつての世界に合わせます。マンガありイラストありでとってもわかりやすい一冊です!(^^)!

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★ 東京スクールのご案内

≪場 所≫新宿御苑前駅 研修会場(ルネ新宿御苑タワー2階)
≪申込み≫ホームページより→ http://caretown.com/tokyo/
(メール、電話、Faxでも受付中!WEBから申込可能!)

⇒シリーズ(8) 「苦情」は利用者(家族)からの「贈り物」〜ケアサービス・ケアマネジメントの質の向上と権利擁護に活かす〜(定員18名限定)
│日 時│01月29日(日)10:30〜17:00 
│詳 細│WEBにて→http://caretown.com/tokyo/caremanage2901.shtml

⇒シリーズ(9) 「ケアマネ事業所の人材育成とメンタルマネジメント〜採用・配置・育成・メンタルマネジメント〜」(定員18名限定)
│日 時│02月19日(日)10:30〜17:00 
│詳 細│WEBにて→http://caretown.com/tokyo/caremanage2902.shtml

⇒シリーズ(10) 「グループホーム・小規模多機能の認知症ケアマネジメント
〜認知症の人の「本人らしさ」と現場を支えるケアマネジメント〜」(定員18名限定)
│日 時│03月26日(日)10:30〜17:00 
│詳 細│WEBにて→http://caretown.com/tokyo/caremanage2903.shtml


★今週のおしらせ

◎中央法規『けあサポ』ブログ(研修写真も多数掲載!)
今週の「ケアマネさん、あっちこっちどっち」
└→「ケアマネジャーの耐用年数」(第488話)
URL: http://www.caresapo.jp/senmon/blog-takamuro/23694

◎中央法規 月刊ケアマネジャー12月号高室流モチベーションアップ講座
└→「5つの要素で仕事満足度を高めよう!」(Vol.9)


◇ 編集後記

もう今年もわずか10日間を切りました。今週にはクリスマスが来て、来週は大晦日、そして翌日は正月となり「2017年」の始まりです。介護保険が始まったのは2000年。あれから丸々17年が過ぎました。2015年もすでに過ぎ、2020年もまもなく。2025年もすぐでしょう。「自分の余命は40年」と豪語する知人(60歳)がいます。さすがと感心しますが、ただの気合か本気か・・・(^^;)。でも自分を振り返り、ちょっと急ぎ気味でやるべきこと・果たすべきことを始める2017年にしたいと・・・NHK「真田丸」の最終回の幸村の言葉(生きた証)にしみじみと感じ入った私です。一年間、メルマガを読んでいただきありがとうございました。よいお年をお迎えください<(_ _)> <ムロ>

個人:http://www.facebook.com/shigeyuki.takamuro
ケアタウン総合研究所:http://www.facebook.com/caretown.jp


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編集及び発行責任者:S.Takamuro
提供:ケアタウン総合研究所( http://m.caretown.com/ )

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