ケアタウン総合研究所
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ケアタウンメルマガ∞元気いっぱい
第453号
2016/03/10(Thu)
http://m.caretown.com/

▼今週の目次▼
[1] ムロさんの熟慮 「認知症列車事故賠償判決〜日本社会が大きくチェンジするチャンス〜」
[2] 最新業界ニュース
[3] 今週の「3つのチャレンジ」
[4] 全国の研修会場の声
[5] 東京スクールのご案内
[6] 今週のおしらせ
[7] 編集後記

→東京スクールのお知らせ←
3月27日(日)10:30〜17:00(定員20名:残席10名)
新ケアマネジメントの仕事術シリーズ(10)
「地域包括ケアにおける地域密着型サービスのケアマネジメント〜グループホーム・小規模多機能型居宅介護の勘所〜」
2月より会場が変更となりました。

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■ ムロさんの熟慮
「認知症列車事故賠償判決〜日本社会が大きくチェンジするチャンス〜」

 2007年12月7日、愛知県大府市でのこと。認知症で徘徊し駅構内に入った男性(91)がホームから線路に降り電車にはねられ死亡しました。男性は「要介護4」の認定を受けていました。玄関で便失禁をしたので後始末をしていた長男の妻と同居の妻(85)が目を離した隙に外出してしまい事故となりました。
 事故後、JR東海と遺族は賠償について協議したが合意に至らず、3年後、JR東海側が「運行に支障が出た」として遺族に720万円の支払いを求めて提訴しました。

 名古屋地裁では720万円が認められ、家族が控訴した高裁では360万円に減額され、今回の最高裁では高齢の妻に賠償責任はないとしました。「家族だからといって監督義務があるわけではなく、介護の実態などを総合的に考慮し、監督が困難かどうかで賠償責任の有無を判断すべきだ」との判断を示し、今回は困難で家族に責任はないとしてJR東海の請求を棄却しました。

 認知症高齢者の在宅介護の悲惨な現実に法が初めて光を当てた司法判断として注目を集めました。しかし問題が解決したわけではありません。なぜなら問題は「認知症の人が徘徊して列車で轢死した」ことは事実であり、列車が遅延し損害を被ったのはJR東海だけでなく乗車した人たちだからです。

 国土交通省の調べでは、認知症患者の事故は増加傾向にあり、14年度の鉄道事故758件中28件も認知症患者が関わっていたというデータがあります。鉄道各社は原則的に家族に賠償を求めても「示談」などで解決するケースが多く、裁判で最高裁まで争ったケースは初めてでした。

 厚生労働省の推計では2025年には、認知症高齢者は700万人を超え、MCI(軽度認知症状)の人を含めると1000万人にのぼる「大認知症時代」が到来します。高齢者の5人に1人が認知症という社会になったとき、では本人や家族などの当事者、損害を被った当事者、そして社会は「認知症が起こす事故」のリスクとどう向き合っていけばいいのでしょうか。

 この訴訟をきっかけに、損保大手は重度の認知症患者が他人にけがを負わせたり他人の器物を壊した場合の「個人賠償責任保険」の契約内容を、同居する家族だけでなく「離れて暮らす家族や成年後見人」も補償対象に加えるように今年10月から順次改定するようです。年間保険料1000円〜2000円で保険金額は最高1億円以上まで賠償金を補償するといいます。

 しかしこれは賠償金の話です。
 4年前、76歳の男性が運転する軽トラックが路側帯に突っ込み、下校中の小学生を次々にはねる事故が発生しました。この男性は認知症の診断を受けていました。ではこの事故でけがをした小学生たちが受けた損害を賠償金ですべて補てんできるでしょうか。体だけでなく心に負った傷はいかばかりでしょう。
 さらに生命を落としたなら・・・

 福岡県大牟田市の「徘徊で行方不明になった認知症の人を地域ぐるみで保護する」取り組みはとても素晴らしいものです。しかし日本は車社会です。認知症の人がハンドルを握って徘徊運転をはじめたら発見もむずかしく、被害者でなく加害者となる危険はいまそこにあります。

 悲劇を生まないために、何をどうすればいいのか・・・
 認知症の人とともに生きる社会をどのようにつくっていくのか・・・
 医療・介護・行政だけでなく交通機関や自動車メーカーなどすべての産業界に突き付けられた大きなテーマです。まさに日本社会が大きくチェンジする「チャンス」なのではないのか、と私は考えます。


■ 最新業界ニュース

1.低栄養予防でモデル事業 高齢者医療の保健事業見直し(厚労省)

 厚生労働省は2月29日、国民健康保険や高齢者医療を担当する都道府県などの課長会議を開催した。後期高齢者医療制度の保健事業では、来年度から高齢者の虚弱(フレイル)に着目したモデル事業を実施する。会議冒頭で唐澤剛保険局長は「今後の高齢者医療では、予防・健康づくりを推進していくことが重要。フレイルなど高齢者の特性に応じた事業を全国的に展開することで保健事業を充実させたい」と述べた。

2.23区の総合事業 通所介護 現行相当も4区が変更へ(東京都)

 2016年度には中野区を除き22区が総合事業に移行する東京23区。指定事業者がみなしで移行するのが「現行相当のサービス」。最も多いのは、当然ながら現行基準・報酬の横滑り組だ。自治体の腕の見せ所といえる緩和した基準のサービス(A型)の未実施は7自治体あり、併せてみると、とりあえず移行を急いで後から考える作戦の自治体も少なくないことがうかがえる。 「相当サービス」の基準・報酬をあえて変更したところも4区あった。新宿区、豊島区は月当たりの包括報酬から1回単価に変更した。

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最新ニュースは「シルバー新報」の協力により著作権の許可を得て掲載しています。シルバー新報 ウェブサイト→ http://www.silver-news.com/
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■ 今週の「3つのチャレンジ」
石川県社協トップマネジメントセミナー「複数面接トレーニング」

1.法人・事業所のプレゼン
2.面接マニュアルの作成
3.現場リーダーの同席
(R.Wさん 女性 施設長)

【ムロさんのコメント】
 採用面接で意外とされていないのが法人・事業所の「理念・行動指針」です。業務内容・勤務シフトなどもほんの説明程度。それなのに一方的に質問ばかりされて吟味をされる。これでは応募者の気分もけっしてよくないはず。今回の研修では「応募者からみなさんは評価されている」ということ。人材不足で売り手市場になっているのに面接はまだまだ上から目線。これではほかの法人を選ぶことになっても仕方ないでしょう。面接マニュアルもないため採用基準がブレまくってしまっています。まずは人事関係の採用力アップが求められます。


■ 全国の研修会場の声
石川県社協トップマネジメントセミナー「複数面接トレーニング」

「きびしい雰囲気の面接より、温かい雰囲気の面接のほうが効果あることがわかった。面接後の口コミも意識したいので、ぜひ温かい雰囲気での面接にのぞみたい」(K.Oさん 社会福祉士 施設長)

【ムロさんのコメント】
 現場がきびしいので面接もきびしくするというのがまかり通ってしまっています。応募者の気持ちをまったく配慮せず、すぐにでも働いてもらいたいのにきびしい雰囲気で通されては働く人はそこで気持ちが萎えてしまうのでは。温かい雰囲気の面接・・・いい表現だと思います。私が提唱する複数面接は現場のリーダーが入ることで採用後の育成に責任を持つこと。実技観察はその人の技術&技量、見本を見せた時ののみ込みのレベルを知ることで採用後の育成に活かす目的があります。すぐに現場に入ってもらうのに技術レベルを観察しないで「質の高いケア」をうたうのはあまりに本末転倒ではないでしょうか?

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★東京スクールのご案内

≪場 所≫新宿御苑前 研修会場(ルネ新宿御苑タワー2階)
≪申込み≫ホームページより→ http://m.caretown.com/tokyo/
(メール、電話、Faxでも受付中!WEBから申込可能!)

「新・ケアマネジメントの仕事術」(中央法規刊)を基本テキストに学ぶ実践的なケアマネジメントスクールです。全国に仲間も生まれます!

⇒シリーズ(10)「地域包括ケアにおける地域密着型サービスのケアマネジメント〜グループホーム・小規模多機能型居宅介護の勘所〜」(定員20名:残席10名)
│日 時│3月27日(日)10:30〜17:00
│詳 細│WEBにて→ http://m.caretown.com/tokyo/caremanage2803.html

⇒シリーズ(11)「施設ケアマネジメント〜特養・老健・療養型・特定施設のケアマネジメント、居住系(サ高住)のケアマネジメント〜」(定員20名)
│日 時│5月22日(日)10:30〜17:00
│詳 細│WEBにて→ http://m.caretown.com/tokyo/caremanage2805.html


★今週のおしらせ

◎ユーキャン通信講座「高室式話し方トレーニング」がスタート!
3ヵ月であなたを話し方の達人に!心地いい声の出し方、抑揚のある話し方、ケアマネジメントプロセス別の話し方、事業所への伝達、苦情対応などのシーン別話し方も。文学座の女優の方に協力いただいた実践的なDVD付きです!
URL: http://www.u-can.co.jp/fukushi/shohin/06/

◎中央法規『けあサポ』ブログ(研修写真も多数掲載!)
今週の「ケアマネさん、あっちこっちどっち」
└→「連載こぼれ話:引き継ぎ会議」(第451話)
URL: http://www.caresapo.jp/senmon/blog-takamuro

◎中央法規 月刊ケアマネジャー3月号 高室流 会議力アップ講座
└→「引き継ぎ会議」(Vol.12:最終回)


◇ 編集後記 ◇
 この3月は石川県社協主催のトップマネジメントセミナーで3回訪れます。この研修は石川県福祉人材・サービス課から「あたらしい福祉人材の育成と定着」という依頼から始まりました。以前から、1年以内に辞める理由に「低い給与、きつい仕事、職場の人間関係」が10年以上経過しても3トップというのに疑問を抱いていました。それに定着率のいい施設もあります。もしかして面接に問題があるのでは?と思ったのが5年前。するとほとんどが施設長面接という実態と実技観察をやっていないという事実でした。いっぽう「いい人がいない」という嘆き。あえて言うなら「いい人に育てる」スタートは採用面接だと私は考えます。どの人も魅力がありそれを活かせるのが福祉職場です。それを引き出す採用面接をするためには技術が必要です。そんな思いを胸に来週も石川県に行きます!(^^)!(ムロ)

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編集及び発行責任者:S.Takamuro
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