ケアタウン総合研究所
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ケアタウンメルマガ∞元気いっぱい
第452号
2016/02/25(Thu)
http://m.caretown.com/

▼今週の目次▼
[1] ムロさんの懸念 「それで見分けられるの?〜老人ホーム転落殺人事件考〜」
[2] 最新業界ニュース
[3] 今週の「3つのチャレンジ」
[4] 全国の研修会場の声
[5] 東京スクールのご案内
[6] 今週のおしらせ
[7] 編集後記

→東京スクールのお知らせ←
2月28日(日)10:30〜17:00(定員20名:残席8)
新ケアマネジメントの仕事術シリーズ(9)
「ケアマネ事業所の人材育成とメンタルマネジメント〜採用・配置・育成・メンタルマネジメント〜」
※2月より会場が変更となりました。

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■ ムロさんの懸念
「それで見分けられるの?〜老人ホーム転落殺人事件考〜」

 先週から介護業界を震撼させる事件の報道が続いています。
 入所者を殺害したとして今井隼人容疑者(23歳)が逮捕。一昨年の11月から年末にかけての連続転落不審死が「連続転落殺人事件」になったわけです。

 本人の供述が主に「介護ストレス」と「厄介な認知症利用者」ですから、メディアの報道もその点に集中しがち。そしてストレスの背景にあるのは、平均すると約10万円も低い月給と過酷な労働実態が描かれます。
 たしかに介護現場は感情労働ですから、ストレス度がきわめて高いのは事実です。ストレスが虐待的な乱暴なケアや暴言・暴力になってしまう現実はあります。これはいかなる状況であっても許されるものではありません。
 しかし、3人もの殺人につながるような極度なストレスとは何か。仮に1人目がそうだとしても、2人目、3人目の殺人は防げたのではないでしょうか。

 実はこの件で私のところに数局から取材&出演のオファーがありました。しかし私は在京していない旨を伝えると情報提供だけでもと求められたのが、「ひどいホームを見分けるにはどうしたらよいか?」でした。

 出演できなかった番組を拝見。冒頭、事件の概要では現場の施設長や介護職の声が紹介され、街の声に続いて有料老人ホームの入居案内を仕事としている人たちの見分け方の解説が始まりました。
「まずは玄関ですね。あたたかい雰囲気がするか。このような(ひな祭り)飾り付けはいいですね。そして掃除の徹底。ここに(背丈まであるポトスの葉っぱ)ホコリがついていないかどうか、も判断基準です」
 カメラは介護職が一緒に食事をしている様子を見せ、非常時の倉庫の備蓄、ペットとのふれあい、屋外の散歩、引き継ぎノートの記述の丁寧さなどと解説は続きます。さらに別の入居案内センターの女性が・・・
「同じ質問を複数の職員に行い、同じ回答が返ってきたらそこのケアは統一しているといえます。重要事項説明書をなかなか見せない、入居ばかりを焦らせるというのはアウトですね」

 なるほど、どれも初歩的、基本的。テレビ的に「絵になる」ためにはこれが限界でしょう。たくさん話されても編集でカットされたのかもしれません。しかしこの程度の質問や着目点なら、施設のケアレベルや虐待の有無はまず見抜けないでしょう。なぜなら事件の舞台となった「Sアミーユ川崎幸町」は見学レベルではどれも合格点?になるからです。

 では私だったらどのようなアドバイスをするか。
 職員一覧の顔写真の印象ですね。覇気がない、ぼんやりしている写真を平気で掲示しているのはちょっと心配です。そして案外と素がでるのが「言葉づかい」。今回も、親しいというより「馴れ馴れしい、ちょっと上から目線」の話し方がバッチリ撮られていました。反面、やたらバカ丁寧なのも要チェックですけどね。
 ふさぎ込み気味で一人きりにさせられている高齢者はいないか。認知症の方に幼児扱い・子ども言葉でかかわっていないか。職員たちが忙しく見せないように配慮しているかなどは大切な観察視点です。
 本当は試食体験、お試し入居、利用者(家族)へのヒヤリングなども大切なのに番組では紹介されていませんでした。数日泊まってみると夜間の様子などすぐにわかるのに・・・残念です。

 このような事件がないホームを見分けたい気持ちはわかります。しかし、現状はどこで起こってもおかしくない、明日はわが身と思っている施設関係者は多くいます。それほど介護現場は「劣化」がはげしいのも事実なのですから。
 だから、どうすればよいか。どこから手をつけるか・・・
 問題は「誰でもいい」となっていること。それを「あなたが(は)いい」と変えるために「入り口=採用面接」の改革から始めては?
 そこには人材改革のヒントがあります。


■ 最新業界ニュース

1.軽度者にデイの効果あり(全国老施協)

 全国老人福祉施設協議会(全国老施協、石川憲会長)は、要介護1、2の軽度者に対するデイサービス利用の効果を調べた調査結果をまとめた。利用者本人と家族を合わせたうちの98%が、体力向上や日常生活行為の改善、認知症の進行予防などなんらかの効果があると回答した。家族が仕事を続けられる大きな要素ともなっているとして、介護保険制度の給付対象から外さないよう15日、厚生労働省と自民党に意見書を提出した。

2.介護体験に事業者賛同〜地域貢献で連携強化〜(八王子市:親和福祉会)

 東京・八王子で特別養護老人ホームの小松原園などを展開する親和福祉会(齋藤悟理事長)は4日、地元小学生を受け入れる介護体験塾を開催した。認知症サポーター養成講座と福祉用具体験、高齢者との交流がセット。養成講座の講師は地域包括支援センターの職員が担当し、福祉用具はレンタル事業者が用意した。親和福祉会が地域に呼び掛け、取り組みに賛同した事業者が運営に協力した。地域貢献で事業者間の連携を強化し、地域包括ケアシステム体制の構築につなげたい考えだ。

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最新ニュースは「シルバー新報」の協力により著作権の許可を得て掲載しています。シルバー新報 ウェブサイト(PC専用)→ http://www.silver-news.com/
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■ 今週の「3つのチャレンジ」
横浜市介護相談員研修「施設ケアの特徴と着眼点〜何を見るか、聞き取るか、感じとるか〜」

1.利用者目線でなく市民目線でみる
2.観察する力
3.職員の声のかけ方をみる
(N.Uさん 介護相談員歴6年 訪問施設数:7施設)

【ムロさんのコメント】
 施設の第三者評価は施設のマネジメントの仕組みに着目して評価します。利用者からの声もヒヤリングしますが、それほど深くありません。介護相談員の良さは利用者目線でない点。利用者目線になると「ここにいれるだけでいい。これくらいガマンしなければ。○○されても仕方ない」という現状追認になりがちです。市民目線とは人権目線。「それは非常識!ありえない!」という目線こそ非常識が当たり前になってしまう施設ケアには必要です。しかし訪問できているのは特養と老健くらい。有料老人ホームに介護相談員が訪問し入居者の声をくみ取り施設側に伝えるなんてことは皆無です。サ高住ならなおさら・・・本当に暗鬱な気持ちになります。


■ 全国の研修会場の声
横浜市介護相談員研修「施設ケアの特徴と着眼点〜何を見るか、聞き取るか、感じとるか〜」

「まれに面会家族と面談することがあります。どの方もやっと入所させることができたことの安堵感が大きいようで、不平をおっしゃりません。私たちが入所者の代弁者として寄り添う心を忘れないように活動します」(名無しさん 介護相談員歴9年 訪問施設数:3施設)

【ムロさんのコメント】
 施設入所が家族の意向になっている例は多く聞きます。それほどに家族介護が破たん寸前であり、その駆け込み寺として施設ケアが機能することも必要でしょう。しかし、お世話?になっているから「文句や要望が言えない」なら利用者ご本人の気持ちや声を誰が代弁できるでしょう。まさに介護相談員の役割はそこにあります。「モノ言う消費者」が日本の家電製品を世界トップレベルにしたように「モノ言う利用者(家族)」が日本の介護・医療をレベルアップさせると思います。

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★東京スクールのご案内

≪場 所≫新宿御苑前 研修会場(ルネ新宿御苑タワー2階)
≪申込み≫ホームページより→ http://m.caretown.com/tokyo/
(メール、電話、Faxでも受付中!WEBから申込可能!)

「新・ケアマネジメントの仕事術」(中央法規刊)を基本テキストに学ぶ実践的なケアマネジメントスクールです。全国に仲間も生まれます!

⇒シリーズ(9)「ケアマネ事業所の人材育成とメンタルマネジメント〜採用・配置・育成・メンタルマネジメント〜」(定員20名:残席8)
│日 時│2月28日(日)10:30〜17:00
│詳 細│WEBにて→ http://m.caretown.com/tokyo/caremanage2802.html

⇒シリーズ(10)「地域包括ケアにおける地域密着型サービスのケアマネジメント〜グループホーム・小規模多機能型居宅介護の勘所〜」(定員20名)
│日 時│3月27日(日)10:30〜17:00
│詳 細│WEBにて→ http://m.caretown.com/tokyo/caremanage2803.html

⇒シリーズ(11)「施設ケアマネジメント〜特養・老健・療養型・特定施設のケアマネジメント、居住系(サ高住)のケアマネジメント〜」(定員20名)
│日 時│4月17日(日)10:30〜17:00
│詳 細│WEBにて→ 3月初旬WEBにて公開予定

※「スクール会員」は会場ですぐに手続きできます!(^^)!(特典:受講料の割引、5回受講につき1回無料。絶賛、誕生中!)
※「新ケアマネジメントの仕事術シリーズ」の今後のテーマはWEBに掲載!


★今週のおしらせ

◎ユーキャン通信講座「高室式話し方トレーニング」がスタート!
3ヵ月であなたを話し方の達人に!心地いい声の出し方、抑揚のある話し方、ケアマネジメントプロセス別の話し方、事業所への伝達、苦情対応などのシーン別話し方も。文学座の女優の方に協力いただいた実践的なDVD付きです!
URL: http://www.u-can.co.jp/fukushi/shohin/06/

◎中央法規『けあサポ』ブログ(研修写真も多数掲載!)
今週の「ケアマネさん、あっちこっちどっち」は「あってはいけないこと〜老人ホーム殺人事件〜」(第450話)
URL: http://www.caresapo.jp/senmon/blog-takamuro

◎中央法規 月刊ケアマネジャー2月号 高室流 会議力アップ講座
「入院時・退院時のカンファレンス」(Vol.11)


◇ 編集後記 ◇

 今回は川崎市の老人ホーム転落殺人事件をフェイスブック、ブログで取り上げ、今回はメルマガのコラムです。なんと、ケアタウンのフェイスブックのアクセスは過去最高の3794!です。これには驚きました。11人の方にもシェアをしていただきました。介護業界でなにかと発信が多い有名人?のみなさんも一様に書いていました。今回、私を急き立てたのは「これは、マジでヤバい!」という直感です。おりしも施設の虐待件数が過去最高という数字が厚労省から発表されました。これも虐待への意識が高まったので届け出件数が増えたこと。これまで隠蔽されていた、無自覚だったことの改善の傾向といえますが、メディアはそうは解釈しません。この川崎の事件は一人の反社会性(殺人への嗜好性?)を持った青年が介護の現場で働き、あるきっかけ(極度のストレス?)が引き金となり行為にいたった事件と解釈するのが妥当かと私は考えます。しかしことはもっと根深いかも・・・事件の全容がわかるまでしばし時間がかかるでしょう。介護ストレスを原因とするのはあまりに浅はかと考えます。(ムロ)

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編集及び発行責任者:S.Takamuro
提供:ケアタウン総合研究所( http://caretown.com/ )

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